痔の治療

 当院ではH18年6月からALTA治療(ジオンによる硬化療法)を導入して以来、内痔核の治療は切除から注射治療(ジオンによる硬化療法)に変わってきています。H20年は内痔核に対して、ジオン単独191例、切除+ジオン32例、切除単独3例とジオンによる硬化療法を中心に行っています。痔ろうや裂肛に内痔核を合併した方も、ジオンを併用しています。H20年は痔手術414例中236例にジオンによる硬化療法をおこなっています。
 ジオンによる硬化療法を導入したころは1泊入院で行っていましたが、現在は日帰りで行っています。ジオンによる硬化療法はH20年夏までに全国で8万例を超え、痔核治療になくてはならないものになっています。当院も2年半で500人を超え、兵庫県で1位または2位の経験をつんでいます。
 
 今までの経験から(ジオンによる硬化療法単独の場合)

手術--- 手術時間15分前後、麻酔なしか、局所麻酔でおこないます。注射は内痔核に行い、1回の手術ですべての内痔核を治療します。

手術後-- 約1時間休んでから帰宅していただきます。痛みはあまりなく、5人に1人位の方が1〜2回痛み止めを服用されています。
脱出していた痔核は翌日の排便時にはほとんどの方で脱出なしといわれています。
手術当日から、日常生活はほぼ普通どおりにできます。
1〜2日仕事を休むように勧めていますが、多くの方が翌日から仕事についています。

再発--- 手術前は脱出して自分で戻していたが、少し出てきている気がするなど、軽いものがほとんどです。今のところ50人に1人ぐらいです。ジオンによる硬化療法を再度行うことで大半は治っています。2人は切除しています。

  
内痔核(いぼ痔)

 時々出血しているだけの方は、便の調節や座薬、軟膏で改善しますが、痔が外に出て自分で戻すようになると、薬の治療ではあまり改善しなくなります。脱出を伴う内痔核がジオンの良い適応です。
 皮膚のたるみ(皮垂)や、皮膚の腫れ(外痔)が気になる方はよく相談して行っています。
 切除が必要な時は切除していますが、ほとんどが1〜2個の切除で、日帰りでおこなっています。通院に1時間以上かかる方は、1泊入院を勧めています。


裂肛(切れ痔)、肛門狭窄

 排便時に硬い便で切れると痛みと軽い出血を伴います。これが続くと慢性の切れ痔になります。排便に苦痛を伴い始めるとなかなか治りません。慢性の切れ痔は奥に肛門ポリープ、肛門出口に見張りイボができます。この段階であれば薬の治療で大半の方が改善します。しかし見張りイボは残るので気になる方は切除しています。何もしないで放っていると肛門が狭くなって排便もしにくくなります。肛門が狭くなったり、慢性の切れ痔が薬で良くならないときは手術を勧めます。

薬の治療-- 便を軟らかくする薬、肛門括約筋の緊張をとる塗り薬、炎症を抑える座薬・軟膏。痛みも出血もないような柔らかい便にすることが一番大事です。

手術--- 当院では肛門狭窄形成術を主に行っています。裂肛根治術は術後の痛み・出血があり、再発も見られるため、あまり行ってはいません。H20年は18例に行い、内痔核を合併した3例にジオンによる硬化療法も併せて行っています。基本的には外来手術ですが、遠方の方は1泊入院を勧めています。


痔ろう、肛門周囲膿瘍

 肛門周囲膿瘍は肛門の周りが腫れて痛み、発熱をともないます。肛門のすぐ近くが腫れるときも、5cmほど離れた所が腫れることもあります。また肛門の周りは全く腫れず、奥のほうが腫れて非常に痛いことがあります。治療は切開して膿を出すことです。切開すると翌日には痛みはほとんどなくなります。肛門周囲膿瘍の多くは痔ろうが原因です。肛門周囲膿瘍を切開した後にしこりが残ればまず痔ろうです。
 肛門周囲膿瘍は放っておくと、膿が外に出て楽になることもありますが、運が悪いと奥に広がったり、横に広がったりして難しい痔ろうになってしまいます。痔ろうは長い間放っておくと痔ろう癌となることもあります。痔ろうは薬で治ることがないため、痔ろうと診断がついたら、手術を強く勧めます。
手術--- 当院では、ゴムシートン法を中心に行っています。手術後の痛みが少なく、複雑な痔ろうも外来手術で行っています。遠方の方は1泊入院を勧めています。H20年は26例の手術で1〜2例でくりぬき法を、残りすべてをゴムシートン法で行っています。


嵌頓痔核(いぼ痔が外へ出て中に戻せなくなった状態)、
  血栓性外痔核(肛門の縁の血豆、腫れてしこりのようなものが触れます)


 共に痛みの強い痔の病気です。
 
 嵌頓痔核
は非常に痛みが強く、出血や粘液も出ます。子供の握り拳程の大きさまで腫れることがあります。絶えずいぼ痔が外に出る人だけでなく、一度も外へ出たことのない人が強く息んだ時にも起こります。当院ではH18年2月以来硬化療法を行い、32例全例で非常に良い成績を得ています。来院時痛みと脱出で普通に歩けないほどの人が、治療後痛みも無くなり普通に歩いて帰れるようになっています。むくみがなくなって落ち着いてから、ジオンによる硬化療法を追加して治療終了となります。

 血栓性外痔核は放っておいても痛みは約1週間で軽くなり、約1ヶ月で腫れも引き、自然に治ります。当院では軽い症状の人以外は硬化療法を勧めています。60例の硬化療法で、9割の方が痛み、腫れが軽くなっています。非常に腫れのひどい方は血栓摘出手術を行っています。


最後に痔の治療を受けようとされている方への心得を一言。

 内痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)は良性の病気ですから、手遅れとかはありません。自分は何が苦痛なのかをしっかりと見極めてください。いぼ痔や肛門ポリープがあるから手術するのではありません。いぼ痔があって、それによる苦痛があって初めて手術を考えてください。そうしないと、手術が終わってから、何も良くなっていないとか、かえって痛みが増して辛くなったということになります。医師とよく相談して、手術をするかどうか、またどんな手術をするか決めてください。



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