他のよくある肛門疾患
血栓性外痔核:肛門のすぐ横に痛みを伴った膨らみができます。ある日突然に出現します。患者さんは痔が出てきて戻せないし痛みもあると訴えられます。思い切りいきんだり、急に重いものを持ったり、ゴルフなどで思い切りスイングしたときに、肛門周囲の静脈内に血栓ができて発症します。
治療:
基本は放置です。自然に血栓が吸収されて治ります。薬は効果なしです。
痛みは約1週間、できた翌日が痛みのピークになることが多く、約1か月で治ります。
腫れた皮膚が壊死を起こし出血することがありますが、これも放っておけば治ります。
痛み止めを出すことはあります。
手術:
痛くて生活に困難をきたすときは、本人の希望があれば手術をします。
血栓摘除術、硬化療法
手術後は楽になります。
嵌頓痔核:思い切りいきんだ時に、内痔核(いぼ痔)が肛門から脱出して自分で戻せなくなった状態です。非常に激しい痛みを伴います。我慢していると血流障害による血栓、潰瘍、壊死、リンパ浮腫などの症状が出現して、出血と嫌なにおいのする浸出液でベタベタします。
治療:
痛みを伴いますが、用手的に脱出した内痔核を肛門内に戻します。戻すだけではすぐに脱出して元に戻るため、当院では戻した後、パオスクレ―という薬で硬化療法を行っています。激しい痛みで歩きづらかった人も、ほぼ痛みもなくなり、普通に帰れるようになります。
この硬化療法の効果は一時的なので、そのまま放置すると再度嵌頓痔核を繰り返します。
3~6か月後に病変を再評価して、ジオンによる硬化療法などを行っています。
肛門周辺のかゆみ:最近肛門周囲のかゆみで来院される方が増えています。
1.軟便、下痢便で、排便後拭きすぎる方
2.硬便で便が出にくいため、温水洗浄で肛門を刺激して排便される方。
が多いようです。軟膏で一時的には改善しますが、軟膏をやめれば再発します。
良い便にすれば拭きすぎはなくなります。また良い便にすれば、温水洗浄で肛門を刺激しなくても自然に排便できます。良い便にすることが根本的な解決策です。
肛門周辺でかゆみの出る病気にパジェット病があります。赤色調の斑状病変で、放っておくと悪性化します。
肛門周辺にはボーエン病、尖圭コンジローマ、肛門周囲真菌症などがあります。
最後に痔の治療を受けようとされている方へ一言
内痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)は良性の病気ですから、手遅れとかはありません。自分は何が苦痛なのかをしっかり見極めてください。内痔核や肛門ポリープがあるから手術をするのではありません。内痔核があって、それによる苦痛があって初めて手術を考えてください。そうしないと、手術が終わってから、何もよくなっていないとか、かえって痛みが増して辛くなったということになります。医師とよく相談して、手術をするかどうか、またどんな手術をするか決めてください。